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安心して絶望できる人生

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 北海道にある浦河べてるの家は
統合失調症などの精神疾患の人たちが住む共同体である。
1978年、日赤病院の精神科を退院した人たちが
教会牧師夫人の協力のもと
昆布作業をしたのが始まりで
今もさまざまな人たちが暮らしている。

 ここの大きな特徴は自分自身
の病気を研究する
当事者研究が盛んであるということ。
自分に命令する幻聴を「幻聴さん」と呼び
なぜ、どんな時に幻聴が聞こえ、またその種類はどういうものか、
その対策などを研究する。

 他にもすぐ救急車を呼んでしまう男性による「救急車の乗り方の研究」
人間アレルギー症候群の研究などユニークな研究報告が並んでいる。

  彼らの間では「自分の行き詰まりに手ごたえを感じる。」とか
「悩み方のセンスがよくなってきた。」など
実にユニークな会話が飛び交うのである。

 この研究発表を読むと
私達健常人が抱く精神疾患のイメージがいかに
偏見に満ちたものであったのかを思い知らされてしまう。
私達には突飛な、まったく意味のない行動としか映らない
彼らの問題行動も、
実は様々な深い意味があったのだということにも気づかされる。
彼らはかなり繊細で傷つきやすい人達なのである。

 彼らは一生懸命自分を分析し、そして生きるために企業し
共同生活を送り
その姿を暖かく見守る「治さない、治せない」がモットーの精神科医、
べてるの家の発足にも加わった「相談するソーシャルワーカー」が
モットーのソーシャルワーカー。(著者)

 同じような症状で苦しんでいる人はもちろん、
周囲に精神疾患者がいる人にもいない人にもぜひ読んでもらいたい一冊である。

 

by arizonaroom | 2011-03-02 22:41 | 映画&TV&本 | Comments(0)