野分

 台風12号の影響で
直撃は免れた関東も、激しい雨が降ったりやんだり。

 私が体験した一番すごかった台風は
10年くらい前に福岡に遊びに行っていた時のものである。
最終日にもろに当たってしまったのだ。

 外を見たら
暴風雨が、大木をなぎ倒し、
友人宅のベランダの鉢植えも飛んで行ったりと
驚くべき光景が目の前で繰り広げられている。
 
 もちろん、電車も飛行機も止まっていて
「こりゃ帰れないかも。」と焦る私に夫はのたまった。

 「まだ長浜ラーメンを食べていない!」

 明日仕事なのに、心配するのはそんなことか!

 幸い午後3時に台風はピタッと止まり
JRと全日空は止まったままだったが
ぎりぎりになって西鉄とJALは運転を再開、
7時半の飛行機で無事に東京に帰って来れたのであった。


 駅までの道すがらに見た光景は
まさに「嵐が去った後」で
あちこちに大木やら物やらが散乱していて
惨憺たる有様だった。

 そんなことを思い出していて
突然、脳裏に浮かんだのが
枕草子の「野分のまたの日」、
(台風の翌日)である。


野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。
立蔀、透垣などの乱れたるに、前栽どもいと心苦しげなり。
大きなる木どもも倒れ、枝など吹き折られたるが、
萩、女郎花などの上によころばひ伏せる、
いと思はずなり。
格子の壺などに、木の葉をことさらにしたらむやうに
こまごまと吹き入れたるこそ、
荒かりつる風のしわざとはおぼえね。


  どんな台風だったのかは知る由もないが
大木も倒れているのだから、かなりすごかったのだと思う。
それなのに清少納言はそれを「いみじうあはれにをかしけれ」と
風情を感じ取っているのである。

 この後がすごい。
いと濃き衣のうはぐもりたるに、
黄朽葉の織物、薄物などの小袿着て、
まことしう清げなる人の、夜は風のさわぎに、
寝られざりければ、久しう寝起きたるままに、
母屋よりすこしゐざり出でたる、
髪は風に吹きまよはされて、すこしうちふくだみたるが
肩にかかれるほど、まことにめでたし。



 あまりの暴風で眠れなかった真面目で美しい人が
朝寝した後の寝起きで、縁側みたいな所に
ぼおっと座っているのだが
(こりゃ私のことか?)
その乱れた髪にも
清少納言は風情を感じているようなのである。

 やはり天才物書きは見るところが違う。

 まだまだ西日本から東北地方では
太平洋側を中心に
暴風や高波、高潮にも警戒が必要だとのこと。

 どうか大きな被害が出ませんように。




 
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by arizonaroom | 2011-09-02 23:14 | 日常&雑感 | Comments(4)

Commented by ぱれっと at 2011-09-03 08:33 x
野分のまたの日、良いですね^^
平安時代の人にとっては、台風も自然の情緒なんですね。
私はジャカルタで日焼けをしてしまったので、「清げなる」ところは一切なくなってしまいました。七難見えまくり…(^_^;)
Commented by arizonaroom at 2011-09-03 09:00
ぱれっとさん
たぶん今の時代より自然と一体だったのだと思いますが
それでも、このエッセーを読んだ中宮定子や女房たちは
清少納言の目のつけどころに驚いたんじゃないでしょうか。
普段きちんとしている人が寝起きで呆然としているのにも
風情を見出すんですから。

ベトナムやインドネシアに私も行ってみたいです。
Commented by ぱれっと at 2011-09-05 13:12 x
あ、そうか、当時でも目の付け所が斬新だったからこそ、1000年の間読み継がれたんですね!

ベトナムはお勧めです!
インドネシアは、バリやジョグジャは見所がたくさんあります。ジャカルタはあまり観光向けではないけれど、旅慣れたエツコさんならまた新しい楽しみ方があるかも。ぜひどうぞ~(^-^)/
Commented by arizonaroom at 2011-09-05 19:20
ぱれっとさん
清少納言は、どんな状況でも前向きに人生を楽しめる人だったんだと思います。そういう人は、エッセイシストにはなれても、なかなかよい小説家にはなれないですよね。
そういう意味で紫式部とは正反対だったんでしょうね。

 アジアの活気は独特ですよね。
アメリカの義両親が元気なうちはアメリカ最優先なので、いつ行けるかな?
旅慣れない夫が足手まといになるかも・・・。