静寂

 事故の影響で朝の電車ダイヤが乱れている。

と、車内に鳴り響く呼び出し音。

「もしもし」とこれまた響き渡る声で電話に出るおばさん。
声を潜める気配もなく、悪びれる風でもない。
実に堂々としたものである。

「今ね電車の中なんですよ。事故でちょっと遅れていて。」

 車内は混みあっているのにもかかわらず
恐ろしいほどの静寂である。
この時私も初めて気が付いたのだが
おしゃべりしているグループがひとりもいないのである。

 その中でおばさんの声だけがりんりんと響いているのだ。

大勢の人たちが、彼女の会話にじっと耳を傾けている・・かどうかはわからないが
なんだか異様な光景である。

 と、電車が駅の手前で突然停車。
ダイヤの乱れで電車が詰まってしまったのだ。

 そのまま動かないまま10分くらい経過。

 今度は何人かが電話を始める。

「あ、もしもし、今電車が止まっていまして
ちょっと遅れます。」

 例外なく会社への電話である。

 ここでも聞こえるのは電話で会話している声のみ。
もちろん相手の声は聞こえないので
モノローグのような不思議な世界が
あちこちで繰り広げられている。

 そして、それ以外の人たちも
スマートフォンや携帯の上で
指を忙しく動かす。

 車内に友人同士で乗っている人がいないのは明らかだ。
こんなに大勢いるのに
それぞれが自分のまわりにバリヤーを張り巡らして
自分の世界の中にたたずんでいる。

 「電車どうしちゃったんでしょうね」などと
隣の人に声をかけることもできない
孤独な都会人たち。

 同じ空間を共有しながら
心はどこか違う次元にあって
ツイッターやフェイスブックなどを通じて
遠くにいる誰かとコミュニケーションを
取る続けている。

 本を読んでいる人も
心はどこかに飛んでいるという意味では
同じかもしれない。

 東京砂漠とはよく言ったものだ。


 
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by arizonaroom | 2011-12-07 23:09 | 日常&雑感 | Comments(2)

Commented by 花ケーキ at 2011-12-08 20:50 x
朝の電車の中では、
友人同士なんていないですよね。
昼の電車なら、おばさんたちが、
かしましかったでしょうにね。
なるべく、かかわりを持たないことが、
都会では、身の安全につながるのでしょうね。
何しろ危険な事が多すぎますから、
Commented by arizonaroom at 2011-12-08 23:58
花ケーキさん
都会では無関心病が流行っているのでしょう。
確かにいちいち他人を気にしていたら
疲れてしまいますからね。

私もたまに友人たちと通勤時間帯の電車に乗りますが、うるさすぎてまわりはきっと大迷惑でしょうね。