人種差別と銃文化
世界中に大きな波紋を広げた。
サンフォードのゲーテッド・コミュニティの
自称・自警団員のヒスパニック系の男性が、
17歳の黒人少年を射殺したのだが
捜査当局が射殺した男を調査した結果、
正当防衛であったとの男の言い分を認めて無罪にしたという事件である。
丸腰でショッピングの帰りの少年を見たこの男性は「怪しいやつがいる」と警察に通報、
「追跡したりはせずに警察に任せてください。」と言われたにもかかわらず
彼は後を追った。
そして「殴りかかられて危険を感じた」から銃を撃ったのだという。
しかし近所の人たちが「外で争っている声がする」と
通報した電話の向こうから、
甲高い少年の声が「ヘルプ!」と叫んでいる声が聞こえているのである。
それは紛れもなく少年のものであった。
この事件にはたくさんの問題が含まれている。
まずひとつはフロリダの「正当防衛法("stand your ground" law)」という法律。
自分のテリトリーに知らない人が侵入してきて身の危険を感じたら
銃を撃っても犯罪にはならないという法律である。
侵入してきた人は身の潔白を証明しなければいけないが
死んでしまったら証明できないので
撃った人の説明のみが証拠となってしまう。
そして、この事件の状況
(公共の場、少年は銃を所持していなかった)では
果たしてこの法律を適用が
適切だったかどうか甚だ疑問である。
もう一つはマスコミのあり方である。
これからまた審議をされるとしても、この男性は今のところ犯罪者ではない。
それなのに顔写真と実名入りで朝から晩まで放映しているテレビのニュース。
まだ容疑者ですらないこの人物をこのように扱ってよいのだろうか。
日本ではあのカレー事件の女性でさえ、逮捕される前までは
名前はもちろん、顔も声も隠されていたのである。
彼の自警団としての警察への数件の通報記録が
テレビで紹介されていた。
それはこんな風である。
「最近この地域に空き巣が入りましたが
今日不審者を見つけました。
「どんな人でしたか?」
「黒人です。」
数件の通報記録のすべてが「不審者は黒人」で
彼がいかにも黒人への偏見があることをうかがわせるという結論になっているのだが
これもよくわからない。
彼は黒人しか通報していなかったのか。
それともマスコミは「黒人を通報したもの」しか紹介していないのか。
これだけでは判断しかねる。
でも、視聴者には「彼は差別主義者」であると思わせてしまった。
そしてもうひとつ。
上の写真がマスコミで使用しているもので
下が現在のふたりである。
数年前に撮影された
無垢な少年と偏見に凝り固まった男性にふさわしい写真を
わざわざ探し出したとしか思えない。
もちろん、私はフロリダ警察が彼を無罪放免にしたのは
おかしいと思っている。
しかし、世論を誘導するマスコミにも怖さを感じる。
この男性もヒスパニック、マイノリティなのである。
警察は一日も早く、この男性を拘束すべきだ。
このままでは怒り狂った市民たちによって殺されてしまうだろうから。
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この記事を書いている最中に新しい事実が判明した。
黒人少年がこの男性をたたきのめしていたというものである。
今後もこの事件に注目していきたい。
by arizonaroom | 2012-03-27 23:24 | ニュース | Comments(2)
私はアメリカに住んだことはないのですが洗練されていないけれども素朴で親切で明るい人々というイメージがあります。
逆にメディアやマスコミに扇動されやすいのでしょうか?
銃社会やマイノリティの人種問題、ますます広がる経済格差など闇の部分も知りたいと思いました。
メディアに扇動されやすいというより
メディアがずる賢い(?)のでしょう。
人種差別という観点だけでこの問題を語るのは
かなり危険なのではないでしょうか。