年賀状

 その昔、フルタイムの営業ウーマンだった頃
同じ部署に事務職の男性がいた。
よその会社を定年退職した後に
委託社員という形で働いていたのだと思う。

 私も転勤があったので一緒に働いていたのは1年足らず。
一緒に、といってもほとんど接点はなかった。
物静かな人で黙々と事務をしていたという印象である。

 プライベートな話など一度もしなかった関係なのに
その男性からなぜか毎年年賀状が来ていた。
直筆のひとことなどない妻と連名の印刷されただけのものである。

 今年こそもう来ないかも、と思って出さないでいたら
やはり来る。
だから、私も腹を決めて(?)毎年年末には出すようにしていた。

 私程度の関係の人にもずっと出し続けているのだから
かなりの枚数に違いない。
毎年、彼は私の賀状を眺めて何を思っていたのだろう。
もしかしたら私の顔すら覚えていないかもしれないのだ。
(私は彼の顔はしっかり覚えている。)

 年賀状だけの不思議な関係が続いて20年以上の月日が流れ
もしかしたらこの細くて長い関係は
永遠に続くのかもと思い始めた今年の元旦、
私は年賀状の束の中から彼の名前を見出すことができなかった。

 正確な年は知らないけれど
80歳はゆうに超えていたはず。

 彼に何が起こったのかは知る由もないし
今後も知ることはないだろう。
電話をして「どうされたのですか?」と聞けるほど
深いつきあいをしていたわけではなかったのだから。

 ひとつだけ確かなこと。
私たちの賀状のやり取りはたぶんもう2度とないのである。
[PR]

by arizonaroom | 2014-01-06 22:50 | 日常&雑感 | Comments(2)

Commented by ぱれっと at 2014-01-10 21:12 x
年賀状だけのお付き合いで20年以上。何か不思議なご縁を感じますね。
私も今年返事をもらえなかった人が1人いました。
昔の友人で、全く会う事もなくなっていて、とうとう見切られてしまったかなという思いもありますが、ちょっとホッとした気分も。人間関係もこんなふうに移り変わって行くんですね。
Commented by arizonaroom at 2014-01-10 22:51
ぱれっとさん
年賀状というものが存在していなかったら、もうとっくに消息不明になっていたと思われる人がたくさんいます。たとえ印刷だけの味気ないものだったとしても、元気でいるということがわかるだけでもいいのかなと思っています。でも、この男性とのこの20年は本当に不思議なものです。
年賀状を長い間やり取りしていたら、その断ち切りが難しいですね。昨年は元旦に来なかったので翌年、出すのをやめたら今度は元旦に来たりして、お互いに探り合いみたいな感じです。
ぱれっとさんのお友達も何かあったのかもしれないし、単に面倒になったのかもしれない。ホッとしたり、寂しくなったり、気になったり。
この季節はいろいろ考えさせられます。