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『Shall we ダンス?』アメリカを行くー周防正行

 
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 まだ21世紀になる前に発行されたちょっと古い本である。
以前私はブログで
「Shall we ダンス?はりメイク版の方が面白い。」
などと書いたことがあったが
これを読んで思いっきり反省させられた。

 日本映画史上空前の人気を博したこの映画に
海外から目をつけたのがミラマックス。
勇んで製作者である周防監督に接触してくるも
悲しいかな、監督はこの映画に関して何の権利もないのである。
こういうところが日本的というか。

 しかし、監督はアミラマックスと共に
アメリカへの過酷なキャンペーンツアーに乗り出していく。

 契約社会のアメリカと義理人情の日本。
映画が売れ、周防監督の価値が高まれば他社との獲得競争が激しくなり
コストが高くなることを恐れ、あらゆる可能性を考慮して契約を進めようとするミラマックスと
「見つけてくれたのはあなた方だから、私はけっして裏切らないのに。」
と戸惑いを隠せない監督。
そして日本の映画はアメリカに入り込む余地無しと思っているのか
ただ成り行きを見ているだけで何もしようとしない日本の大手映画会社。
日米の映画業界にこれほどの差があるとは夢にも思わなかった。

 アメリカ人は外国映画と聞くだけで見る気がしない人が大半なので
(それは本当だ。)
いかに観客の足を映画館に運ばせるか涙ぐましい努力が展開されていく。
不自然なカット、編集は監督をあきれさせ、落ち込ませてしまう。

 また試写会でのアンケートを基に映画を作り変えてしまう
ハリウッドも恐るべしだ。
こうやって観客におもねってしまった結果
質のよい映画が少なくなってしまったのかもしれない。

 数々のツアー中のインタビューでは
アメリカ人のあまりにも日本文化への無知さ加減には本当に笑える。
たとえば「西洋の文化をポプラーにしたことで批判は起こらなかったか。」とか。
(怒らずに笑ってしまうところが
日本人の長所でもあり欠点でもあるのだなあ、これが。)

 日の丸を背負ってアメリカ全国を回っているにしては
気負いもなくごく自然体の監督には本当に好感が持てる。
結果大成功を収めたわけだ。

 この本だけを読んでいると
周防監督の将来は輝かしいもののように思えるけど
ここ数年音沙汰がなかったのはさびしい限りだ。
ぜひ今後の活躍を期待したい。

by arizonaroom | 2006-06-04 18:38 | 映画&TV&本 | Comments(0)