お嬢さん放浪記

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 旅が大好きだった私の愛読書は
御多分に漏れず
沢木耕太郎の「深夜特急」であった。
なかなかあのような旅はできないけれど
一人旅を極めたい若者にとっては
沢木の旅は常に憧れの的である。

 それとは別に女性としてひどく感銘を受けた
異国での滞在記が2冊ある。
それは犬養道子の「お嬢さん放浪記」と
岸惠子の「ベラルーシの林檎」である。

 岸女史については次回に譲るとして、
まずは犬養女史の「放浪記」について触れてみたい。

 恵まれた家庭に育ちながら
戦後まもなく、当時の若い独身女性としては稀有の
自力(といっても奨学金を得たわけだが)で
アメリカ留学を果たしたところから
この驚きのストーリーは始まった。

 「お嬢さん」といって侮ること無かれ、
彼女のたくましさは並大抵のものではない。
アメリカでは、ラジオのニュースで聞いただけの
著名人のところに押しかけ
お小遣い稼ぎの自分の講演会の約束を取り付け
入院した先ではパラシュートからロザリオを作り
販売することを思いつく。
ある意味向こう見ずの勇気には恐れ入る。

 しかしこれだけではない、
パリに滞在中、自分も腹ペコなのに
留学生のためのサマーキャンプを思いつく。
思いついたら実行あるのみ。
とうとうお城をもらいうけ、およそ実現不可能なことを
実現してしまった。

 カトリックの土壌のある彼女である。
まだまだ日本ではボランティアという概念がない時に
奉仕のために世界中を忙しく飛び回っていた女史。
「日本」という枠にはおよそ嵌りえない
スーパーウーマンである。

 ただ観光地を周り、ガイドブックの写真と
同じであることを確認することだけが旅ではない。
現地のおいしい郷土料理を食べることだけが旅ではない。
ましてやお土産を買いあさるなんて
旅の本来の目的であるはずがない。
(まあ、私もしているけど。)

 私の旅とは
「見知らぬ土地で人と出会い、会話をし、思考する。」
ことである。
(ということで、私の中ではアメリカ行きは旅ではない。)

 彼女が旅した時代と私が旅をした時代とは
環境も全然違うし
勇気、決断力、頭のよさ、慈悲の心など
彼女が持つ素晴らしい能力を
私は何一つ持ち合わせていないけど
読むたびに胸がいっぱいになるこの本。

 ぜひ旅に出る前に一読をお勧めしたい。
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by arizonaroom | 2007-05-24 22:22 | 映画&TV&本 | Comments(2)

Commented by palette12 at 2007-05-25 17:38
私も犬養さんの本、好きで、何冊か読みました。「花々と星々と」とか、「セーヌ左岸で」とか「ラインの岸辺」とか。
どんな時にも毅然としているところ。批判の精神。本当に困っている人への暖かさ。素敵な人ですね!
でも、これは読んでいない!うかつでした。
ブックオフで探してみよう・・・
Commented by arizonaroom at 2007-05-25 21:57
paletteさん
この本を読むと犬養さんの原点がわかりますよ。
あの時代にこんな女性がいたのは
本当に驚きです。