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ONCE ダブリンの街角で

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映画を見終えてから、ふと思った。
「主人公の名前ってなんだったっけ?」と。
そして気がついた。
名前なんて最初からなかったのだ。

 アイルランドのダブリンで出会った男姓と
チョコ出身の女性。
男性のオリジナルの歌をベースにしながら
ふたりの恋とも言えない淡い思いを綴った物語である。

 ハリウッドの映画に慣れてしまっていると
ちょっとまだるっこしいかもしれない。
たとえば、ハリウッド映画の定番は
会ったとたんにベッドを共にする男女、
早い画面展開に破壊される物たち。
そして手段を選ばず、強引に勝つ「正義」、
最後は大成功して自分を振った恋人を見返し
自身はすべてのしがらみを振りきって新しい恋人と結ばれる。
でも、この映画ではこのどれもが期待できない。

 それでもこれは日本人好みの映画だと思う。
ダイナミックな展開こそはないが
イギリス映画とは違って
明るい未来はある。
ちょっと女々しいところはあるが
悪い人は全然出てこないので
見ていて本当に気持ちがいい。

 女性が修理してもらう掃除機を
街中ずるずると引きずって歩く様子は
日本人には想像を絶するシーンではあるものの
この貧しい移民女性への
感情移入はたやすい。

 そして男性が昔の恋人を想って歌うシーンでは
わざとホームビデオのような映像を使っているので
こちらも見るものをとても切なくしてしまう。

 これは驚くほど低予算の映画らしい。
でも、2008年度のアカデミー歌曲賞を受賞しただけあって
作中の歌がすべてよい。
というより、作品全体がグレン・ハンサードの
プロモーションビデオかも。
 
 アメリカ人なら見終わった後
「なんだ、何も起こっていないじゃないか。」と思うかもしれない。
でも確実に主人公たちは前に進んでいる。

 彼らの未来は
私たちの想像力に任せられる。
なぜなら登場している主人公たちは私たち自身なのだから。

 この微妙な感じがアメリカ人にはわからないだろうな~。

(うちのアメリカ人は・・・・聞いていないが
音楽はすこぶる気に入っていたらしい。
セリフはアイルランド訛りがきつくてよくわからず
ひたすら日本語字幕を追っていたようである。)

by arizonaroom | 2008-06-24 21:54 | 映画&TV&本 | Comments(0)