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つみきのいえ

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 この作品がアカデミー短編アニメ賞を受賞した時
多くの日本人と同じように私も、この監督のことは全く知らなかった。

 授賞スピーチでは若い日本人には珍しく
「Thank you」の「th」を思い切り「s」と発音し
「sank you」を連発し
最後は自分の会社「ロボット」と
80年代の「ミスターロボット」の歌詞にかけて
「ありがとう、ロボット」とかっこよく決めたこの青年は
どうみてもオタク、(失礼)。

 しかし、映画を見て驚いた。
このオタク青年から、こうも繊細で深みのある作品が出来上がるとは!

 実は私はこの作品は受賞直後にしっかり見ているのだが
これなら、なるほど受賞は当然と思ったのだった。

 海面が上昇するたびに。家を上へ上へと、
まるで積み木のように積み上げて住んでいるおじいさん。
ある日、お気に入りのパイプを海に沈んだ部屋に落としてしまったおじいさんは
もぐって拾いに行く決心をする。

 もう誰も住めない海に沈んでしまった部屋、
でもかつては、ここには亡くなってしまったおあばさんと営んだ
暖かい家庭があったのだ。

 ひとつずつ先に進むたびに思い出は時をさかのぼっていく。

 病床のおばあさんと過ごした最後の部屋。
娘夫婦が家族を連れてやってきた部屋。
娘が初めて連れきた婚約者。
もじもじしているおじいさんに「あいさつをしなさい」と促すおばあさん。

 成長しては、船で町を出ていく幼かった娘。

 そして一番下の家。
かつてその町が陸の上にあった頃の家。
幼いふたりが走りまわる。
そうおじいさんとおばあさんは幼馴染だったのだ。

 たった12分の短編でしかもセリフはない。
それなのに、私たちにはおじいさんの人生が走馬灯のように
すべて見えてしまう。
 

 おじいさんは実に淡々と人生を受け入れているようにみえる。

 私はこの短編を何度も何度も見た。
そして見るたびに涙している。
BGMの音楽がまた涙を誘ってしまう。

 DVDにはナレーション付きとナレーション無しがある。
外国ではナレーター無しで配信されているようである。

 一方ナレーションは長澤まさみが担当していて
これがまた映画にマッチしていてとてもいい。
しゃべりすぎず、実に控えめに
暖かい雰囲気を出すのに一役買っている。

 ぜひ世界中の人に見てもらいたい映画である。

by arizonaroom | 2009-06-12 21:53 | 映画&TV&本 | Comments(2)

Commented by ぱれっと at 2009-06-13 22:32 x
これ、いいですよねー。全編みたわけじゃないのですが、何かの番組で制作者のインタビューと一緒に部分を見ただけで、泣けてしまいました。これに賞をくれたんだから、アカデミー賞の審査はさすが、という気がしました。賞をとらなかったら、存在さえ知らなかったと思います。
Commented by arizonaroom at 2009-06-14 19:10
ぱれっとさん
「おくりびと」の方が脚光を浴びてしまって
ちょっとお気の毒でした。
ぜひ全編ご覧になってください。
12分の作品なのに見るたびに発見があり
本当に繊細に作られているんだなあと感心します。