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グラン・トリノ

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 先週たくさんの映画をレンタルして見まくったのだが
その中で特に好印象を持ったのが「ミリオネア」と
このクリント・イーストウッド監督・主演の「グラン・トリノ」である。

 元軍人でフォードの自動車工だった
ウォルトは頑固で人種差別者だ。
いや、人種差別者と決め付けるのは
ちょっとフェアでないかもしれない。
アメリカの田舎には、こういう爺さまはけっこういる。
今まで外国人とまともに向き合ったことが無く
アメリカ以外は全部未開の発展途上国だと思い込んでいるという
単なる無知なだけなのだ。
 
 妻に先立たれたばかりの彼の隣に住むのは
なんだか得体の知れないアジア人である。
多くの人が集まって薄気味悪い集会はしているし
ポーチに座っているばあ様は、わけのわからない言葉で
ウォルトを怒鳴りつけるl。
 愛国者ウォルトにとっては大変嘆かわしいアメリカの現実である。

 しかし、ひょんなことでここの姉弟、スーとタオと知り合い
交流を持つようになる。
彼らは少数民族でベトナム戦争の時に
アメリカに味方したため亡命を余儀なくされた少数民族なのだ。

 朗らかなスーにひたむきだけどちょっと頼りないタオ。
ウォルトの心は次第にほぐれていき
彼らはかけがえのない友達となっていく。

 そんな中、事件が勃発。
タオの従兄弟のギャングチームといざこざがあり、
その責任の一旦はウォルトにもあった。
そこで彼の下した決断とは・・。
そして彼のビンテージの愛車グラン・トリノはどこへ?

 実の息子たちや孫からも煙たがられていたウォルト。
息子の妻が老後施設のパンフレットを見せられ
説明を受けているとき、ウォルトの顔が
戸惑いから怒りへとじわじわと変化していく
表情が真に迫る。


 息子たちは彼らなりに父の心配をしているのだろうが
完全にボタンを掛け違えている。

 息子とは心が通じ合わないウォルトではあるが
タオとスーと知り合うことによって
彼のかたくなな目が開かれていき
不器用ながら、心の交流が始まっていく様子は
とても自然である。

 そして彼の姉弟のために下したウォルトの決断がとても切ない。

 クリント・イーストウッドは、
「父親たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙」の時も思ったが
フェアな目を持つ心優しい国際人だと思う。

 
 折りしも昨日か今日の新聞で
タイの難民キャンプに30年以上もいる4400人のモン族たちが
近々ラオスに返されるという記事を読んだ。

 彼らの無事を祈るばかりである。

by arizonaroom | 2009-12-30 21:49 | 映画&TV&本 | Comments(2)

Commented by ぱれっと at 2009-12-31 12:16 x
>タイの難民キャンプに30年以上もいる4400人のモン族たち

で、すごい衝撃を受けました。30年以上住んでいても難民は難民というところに。そこで生まれて成人した子どももいるでしょうし、そういう子どもにとって祖国に戻るというのはどういう意味を持つのでしょうか。(映画から離れたコメントですみません)

今年も後わずかになりました。どうぞ良いお年をお迎えください。来年も記事を楽しみにしています^^
Commented by arizonaroom at 2009-12-31 19:16
ぱれっとさん
私はアフリカ難民へきれいな古着を送るボランティアに
ちょっと協力したことがあったのですが
難民キャンプの映像に衝撃を受けました。
受け入れる国も貧しいので、難民に仕事をしてもらっては困るのです。
だからキャンプ地から出さないのです。
食べ物は飼料としか言えないもので
だけど人口はどんどん増えていきます。
子どもがすごい勢いで生まれるんです。
他にすることがない、という下世話な推測より
絶滅の危機に遭遇すると子孫を殖やすように
脳が命令するのだと言うほうが
正解のような気がします。

 タイのキャンプについては詳しいことは知りませんが
もし囲まれている場所なら
やはりモン族のアイデンティティは失わないのではないでしょうか。
 
 ぱれっとさんはインドネシアで年越しですね。
お正月の風景楽しみにしています。
来年もこちらこそよろしくお願いします。