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ノースフォーク 天使がくれた奇跡

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 不思議な映画である。
ハリウッド映画というよりヨーロピアン映画という雰囲気。

 1955年のモンタナ。
ひとつの小さな町がダムの底に沈む。
立ち退きに応じない人を立ち退かせるために派遣された人たち。
追い出す側に立つ父と息子。
老いた神父と重病の孤児の少年。
少年の夢の中に出てくる自分たちの仲間の天使を探している
天使らしくない天使たち。
 
 これらの話が交互に出てきて、なかなかややこしい。
映像もストーリーの展開も
まるで霧の中のようにはっきりしない。
神父もささやくように話すので
字幕がなければ何を言っているのか
さっぱり聞き取れない。

 登場する人々の服装も車も1950年代より古そうだし。
 
 少年の夢の中の出来事も実際に起こっていることも
すべてファジーの世界なのだ。
もしかしたら少年の夢の中の方が現実の世界なのかも。
いや、絶対そうだ。
私たちの生きている世界の方こそ幻想なのだ。

 先ほど「神父」と書いたが
実は確信がない。
映画では「ファーザー」と呼ばれているし
「許しを与えるのが私の仕事だ。」と言っている。
(プロテスタントの牧師は神の代理人ではないので許しは与えない。)
でも、教会はカトリックというよりプロテスタントスタイルで
手に持つ十字架はカトリック。
これはわざと曖昧にしているのだろうか。

 ノアの箱舟じみたものを作って「神に意思に従う」と
居残っている男も妻を二人持っているし。

 原題は「ノースフォーク」。
邦題では親切に「天使がくれた奇跡」と説明をしているが
これはいらなかったかも。
明るいミラクルファンタジー映画と誤解させるだけである。

 少年は沈み行くダムの象徴なのだろうが
ひとつの村の死というより
もっとテーマが大きいもの、
私たちの漠然とした死への不安というものが
そのまま映像になっているような気がした。

 好き嫌いがはっきり分かれる映画かも。

by arizonaroom | 2010-07-27 23:44 | 映画&TV&本 | Comments(0)