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YOSHIKI/佳樹

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 母がXジャパンのバラードが好きで
アルバムを何枚も持っていることは知っていたが
先日、この本を実家で見つけた時は絶句してしまった。

 いい年をして、なんというミーハー!と呆れてしまったわけなのだが
でも読み進めるうちに、
私が思っていたような,
いわゆるアイドル本
~ゴーストライターによって書かれた
1時間で立ち読みできてしまう中身がまったくない
タレントの一人称のエッセイ~
とは全く違っていたのがわかった。

 この「YOSHIKI」はノンフィクション作家の小松成美さんが
10年かけて執筆したもので
莫大な資料と綿密な取材によって構成されている。

 HIDEの死から始まったストーリーは
YOSHIKIの幼少時代へと遡り
Xに向かって突き進んでいく。

 YOSHIKIは昔から二つの両極端の側面を持っていた。

 静と動
 反逆と真面目。
 不良の問題児で優等生。
 ピアノでクラッシックを静かに奏でるかと思うと
 ロックの激しいリズムをドラムで叩きまくる。
  
 妥協という言葉を知らない青年。
 天才という言葉がふさわしい青年。
 仲間思いだが孤独な青年。

 彼の周囲には常に死の影が漂っている。
死への誘惑が絶えずあるのに
実際に死んでしまうのは彼ではなく、彼の愛する人たちだ。

 筆者はインタビューで次のように語った。
 「1999年にYOSHIKIさんに
 一度インタビューさせていただいいたことがあったんですが、
 きっかけはその一年後、ご本人から
 『ファンのためにできることは、
 真実の僕を知ってもらうこと。

 ただ、僕が話すだけだと、僕のすべてが語られたことにはならない。
  僕を俯瞰して、僕の周囲も取材して、
  僕の知らないことも書いてほしい』と依頼されたのが始まりでした」


 世の中にはこんな人が本当に存在するんだと
人生をてきとーに生きている私は心底驚く。
 
 こういう人が何かを成し遂げるのである。
畏敬の念が起こると同時に
いったいこの人に安らぎというものはあるのかと
悲しい気持ちにもなってしまう。

 たとえXジャパンの存在を知らない人にも楽しめる本である。

 読み終えた後、しみじみと彼の音楽に聞き入ってしまった。

by arizonaroom | 2012-02-08 23:15 | 映画&TV&本 | Comments(0)