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脳は催眠術にかかりやすい

 最近私の周りでも、オレオレ詐欺の話がチラホラ出てきた。
もうこれだけ広がっているのだから
だまされる人はいないだろうと思うのは間違いである。

 経験の無い人にはわからないかもしれないが
だまされた人は無知だったのではない。
一瞬のうちに催眠術にかかってしまっただけである。

 詐欺師はプロである。
どのキーワードを使えば相手スイッチを押せるかをよく知っている。
いったんスイッチが入ればしめたもの。
相手の思考能力はパニックのためストップしてしまい
後は赤子の手を捻るようなものだ。

 私は高校時代、友人と二人で文化祭に手相占いをやったことがある。
たった2冊の本を読んだだけの知識しかなく、しかも1年生の分際で
決心したのだからたいした度胸である。
しかし、これがよく当たると上級生の間で評判になり
文化祭が終わった後も「ほらあの子よ。」とよく声をかけられ
いきなり目の前で手のひらを差しだされたものであった。

 もちろん私には何の能力もなかった。
私が持っていた物は、薄暗いブースとろうそくの光、
どこかのクラスが仮装で使用したシスターの衣装と怪しげな音楽。
そして巧みな話術。
「あなたはとても人の言葉に影響されやすい人ですね。」
(女子高校生だったら、ほとんどがそうだ。)
「今あなたには好きな人が」(と、ここで相手の反応を見ながら次の言葉を捜す。)
ひとたび、相手の心をつかんだら後は簡単なのだった。
(一応断っておくが、まるっきりでたらめではない。
本は2冊読破しているのである。その本が正しいかどうかは別として。)

 夫の家族にはマジシャンが多い。
マジックも一種の催眠術である。
言葉と動作で相手を間違った方向へ誘導する。
観客は選んでもいないものを「自分で選んだ」と思い込み、
見てもいないものを「見た」と錯覚するのである。

 道に迷った知人から電話がかかった。
「今駅前の交番なんですけど。」
西口の駅前に交番はない。
しかし、私は相手は西口にいると思い込んでいるので
まさか東口の交番の前にいるとは夢にも思わない。
勝手に駅から徒歩10分の距離にある交番にいるのだと信じ込んでしまった。

 1時間間違えて早く自宅を出てしまった友人。
遅刻したと思い込んでいる彼女はひたすらあせっている。
1時間早い電車に乗っているのだから、混み具合が全然違うから
途中で気がついてもいいはずなのに
「今日はどこかの電車が事故で止まっているから混んでいるのね。」
などとずっと勝手に解釈していたのだった。

 戦時下では平和を愛する人でも、いとも簡単に
軍国主義に変わってしまうのだそうだ。

 自分はしっかりしていると思い込む過信が一番危ないのかもしれない。

by arizonaroom | 2006-07-09 23:50 | 日常&雑感 | Comments(0)