人気ブログランキング | 話題のタグを見る

クラッシュ

 クリスマス間近のロサンゼルス。黒人の警察官、
同僚でもあるヒスパニックの恋人。
白人に憎しみを持つ黒人のチンピラに
社会的に成功した裕福な黒人夫婦、
野心家の検事とその妻に恵まれない白人たち。
アラブ人と間違えられて憤るペルシャ系移民。
たくさんの人種が入り混じる中、
ある日自動車事故が・・。

 人種差別という重いテーマである。
が、それを実にサラッと描いている。

 「なぜ人種差別というものが存在するのだろう。」と 
映画を見ながら
ほとんどの日本人は怒りを感じるだろう。

 しかし、ことはそんなに単純でないことに
私たちはだんだん気づいていってしまう。
正義と悪との戦いではないのだ。

 裕福な黒人に意味もなく怒りを覚え
彼の妻に性的侮辱をしてしまう白人警察官と
それを正義感から許せないパートナー。
これだけ見るとどちらが悪でどちらが善か一目瞭然だ。
でも、ストーリーが進むにつれ
必ずしもそうでないことに私たちはだんだんと気がついていく。

  まず、ひどい、堕落した差別主義者にしかみえなかったのに
自分の身の危険も顧みず、
必死に黒人女性を助けようとする警察官に
私たちは呆然としてしまうだろう。
 
 かたや「自分は人種差別者ではない。」と信じている青年は、
黒人青年が「夢はホッケー選手だった。」と言えば
笑ってしまい、
ちょっとした挙動不審で(彼は強盗に変身する)と思い込んでしまう
自分の中のステレオタイプにはけっして気がつかないのである。

 この映画から得るものはけっして絶望だけではない。
愛。異性愛だけではない。人種を超えた愛。
そして希望も。
いつも不機嫌だった人種、社会的全ての頂点にいつ検事の妻に
安らぎを与えてくれた「真実の友」とはいったい誰だったのか。
機会があればぜひご覧いただきたい。

by arizonaroom | 2006-08-09 21:21 | 映画&TV&本 | Comments(0)