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脳のなかの幽霊 (V.S.ラマチャンドラン著)

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 事故などで切断し、もう存在しないはずの手が
しばしば痛むという話を聞いたことがある。

 手が自分の意思に反して勝手に動くという
「エイリアンハンド」の患者の話をテレビで見たことがある。

 癲癇の治療のため右脳と左脳の通路を切断された患者が
左目で見た映像について答えられないという現象についても以前読んだ。

 この、「脳のなかに幽霊」とは
それらを上回る信じられないようなケースを紹介しながら
ひとつひとつをユニークな実験によって
解明しようとしている神経科学者が書いた書物である。


 脳卒中によって半身不随になった患者が
その麻痺した半身をまったくないもののように振舞うというケースもあった。
お化粧も髪の毛を整えるのも半分だけ。
しかも動かない手を動くと言い張る。

 信じられないような見え透いた嘘。
しかし本人は至極まじめ。精神に異常をきたしているわけでもない。
すべて脳の損傷が原因なのだ。

 著者であるインド人科学者はアメリカの著名な科学者だ。
一見大胆な仮説を唱えているようにみえるが
実は大変慎重で謙虚な人である。
彼の仮説はすべて根気よく積み重ねられた
豊富な実験データに基づいているのだ。

 この本にはたくさんの画像もあって
実際に見てもいない映像を
脳がいかに勝手に作り出してしまうか
読者も体験できるのがおもしろい。
(本を動かしたりするので立ち読みでは無理かも。)

 私は100パーセント文系の頭の持ち主であるが
それでも十分理解でき楽しめた。
本当に面白くて考えさせられる本だ。

 脳とは何か。そして自分とはいったい誰なのか。
殺人犯はけっして矯正できないのか。

 何らかの信仰を持つもの、無神論者、哲学者、
科学者など、
同じようにこの書物を読んでも
おそらくそれぞれが違う結論に至るであろう。


 私も実際読み終わった段階で
いろいろ思うことがあるのだけれど
それについては誤解を招かないように書ける自信がないので
触れないでおこう。

 百聞は一見に如かず。
ぜひ一読を。

by arizonaroom | 2006-09-12 22:03 | 映画&TV&本 | Comments(2)

Commented by tochin at 2006-09-13 19:08 x
とても面白そうな本ですね。アマゾンで買う可能性大ですねー。
日本にもこういう人がいるのだろうけど、このテの科学本はアメリカ(今回はインドですが)のが面白いですよね。

以前から職場で実感するんですが、日本人は事実を根気よく観察し分析する作業が実は苦手という気がするんですよね。経験則による勘が好きというか・・・。本の話題から飛躍しすぎですね。
Commented by arizonaroom at 2006-09-13 19:48
tochinさん
著者がアメリカに住むインド人というところがキーなんだと思います。
アメリカ人だったらここまで謙虚には書けないような・・・。
私が思うに日本人は根気よく観察し分析はできるのだけれど
そこから飛躍したトッピな発想をすることが苦手なのだと思います。
いや、学会を覆すような意見が言えないだけかな?
とにかく、ここでは書ききれないような不思議な現象が盛りだくさんです。
「私って本当は誰?」と数日間悩むこと請け合いです。